川辺のレモン

映画・ドラマ・本の感想など。ネタばれあり

もはや親戚のおばちゃん目線/『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』感想

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観たことのない名作を観てみようシリーズ。
amazonプライムビデオで鑑賞。

あらすじ

もはやお子様向けアニメ映画の枠を完全に脱した感のある「クレヨンしんちゃん」映画版の9作目。21世紀を無かった事にして、再び世界を20世紀の時代に返そうと画策するイエスタディ・ワンス・モアのリーダー、ケンと自分たちの未来を守るべく立ちあがったしんちゃんの壮絶な戦いを描く。
春日部に誕生した“20世紀博”。そこはひろしやみさえたちが育った70年代のテレビ番組や映画、そして暮らしなどを再現した懐かしい世界にひたれるテーマ・パークだった。大人たちは子供そっちのけで“20世紀博”に熱中していくが、しんちゃんたち“かすかべ防衛隊”の面々はそんな親の姿に呆れながらも心配そうな目をしていた。その夜、20世紀博から重要なお知らせがある事を思い出してTVを付けるとひろしたちは……。(allcinemaより)

ネタばれ感想

クレヨンしんちゃん」については、弟がしんちゃんの真似をするからという理由で実家では禁止されていた、というぐらいの印象しかない。映画版も、TV放映されていた『超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』と『バカうまっ!B級グルメバイバル!!』をぼんやり眺めてたくらい。(後者はうまくまとまっていて、前者はストーリーと演出が…という感想)
オトナ帝国については超名作というだけあって各所であらすじもクライマックスも聞きかじりしてしまっていて、今さら観るのもどうなのかと思ったけど、結局父ひろしの回想とラストでしんのすけが走る場面で泣かされてしまった。
シリアスになりすぎないようなバランスで演出されていたけど、「両親が自分を見捨てる」って子供にとってはすごく怖いシチュエーション。そういうシーンになるたびに胸がズキズキ傷んだし、子供たちががんばるシーンでは「こんなちっちゃい子に無理させんといて!」ともはや親戚のおばちゃん目線で観てしまっていた。
私は子どものころ、昔を懐かしむ大人の発言をきいても内心ケッと思うようなひねくれた子だったけれど、今はこの映画の前半のような大人たちの気持ちも少しわかる。でも、どんなに希望がない時代になってしまっても、責任の大きさに投げ出したくなる立場になっても、未来を向いてもがいていくしかない。子どもにとってだけじゃなく大人にとっても、本当の希望はその先にしかないのだから。たまに「あー働かなくても親が守ってくれる幼稚園時代に戻りたい」と思ってしまう自分だけどそう思う。

参考リンク

 

日記が続かない人へ/『日記の魔力』感想

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2年前、過労で心身の調子を崩した時から手書きで日記をつけ始めた。
私の場合は「モーニング・ページ」という朝起きて思いつくことを3ページかきなぐる、というメソッドからはじめたので、内容は感情の吐き出しや整理が中心なのだが、徐々に形式を変えて今も毎日書き続けている。
しかしやりたいことが増えて忙しくなってくると「日記をやめてこの時間を他の行動にあてるべきでは…」という迷いが定期的にやってくる。ちょうどこのブログをはじめた最近もこの波がやってきていたので、Kindleでこの本のタイトルにひかれた。

あらすじ

日記をつけはじめてみたものの、なぜか続かずに挫折する。
そんな経験をお持ちの方にオススメなのが本書。
日記の書き方、続け方、そして、その効果的な活用法のすべてを
一冊の本にまとめたものです。
著者は日記歴30年の自称「日記の名人」であり、
また駿台予備学校のカリスマ名物講師として有名な表三郎先生。
「日記は人生のサポーター」が口ぐせで、人に会うと、
つい日記を書くことを勧めてしまう「日記の伝道師」でもあります。
この本を読み終えたその日から、日記をつけたくなる……。
そんな魔力を秘めた本です。
 
【目次より】
●日記をつけると「使える時間」が増えるのはなぜ?
●過去の思い出ではなく、未来をつくるために書く
●感想を書くのはやめるにかぎる
●マイナスはダメ、プラスの言葉を使え!
●京大式カード日記からパソコン日記へ
●日々の細かな出来事こそ、書き記す価値がある
●「場所」は記憶を呼び出す「カギ」である
●日記をつけると「記憶力」がよくなるのはなぜか
●「発想」ではなく、「着想」を記録する
●「目標を紙に書くと実現する」は本当か
●「将来の宣言」をどんどん書こう
●なぜ読み返すことが重要なのか
●元気がないときほど日記を読むべき理由
●日記をパソコンでつけると脳が軽くなる
●「問いのプール」はつながっている
●答えはすべて自分の中にある ほか

ネタばれ感想

日記をつけることで等身大の自分が見えてきて、自己管理を含めた未来の指針に役立つ、とか「問い」を考え抜くのに有効、というのには共感した。「問い」というのが唐突で哲学的な話が急に始まるので困惑してしまうが、ようは自分の考えを深めることができる、ということだろう。
実際、ネットで情報収集してSNSで発信して…という日常を送っていると、ひとつのことに自分ならではの意見を持つ前にまた別の話題についての情報が入ってきてしまい、ひとりでじっくり考える時間が減ってしまう。長文で固い文章を読むのが苦手になって、自分の感情を言語化するのも億劫になって、なんとなく空気で判断して自他の価値をはかる、短気で反射的な生活。別に誰かを批判する意図はなく、自分の経験からそうなりがちだと思っていたが、日記を書くようになってからは多少改善されたと実感している。
私は映画や本が好きで他人の感想を読むのも大好きだけど、まず日記に自分の印象や感想を書いてから他人と話し合ったりネットで検索するようにしている。そうでないと「大勢の人が言っている意見」が正しいのだと思い込んでしまいそうになるから。(このブログで批評的な作品論ではなくごくごく個人的な感想を書いているのもそういう理由。多数派の意見とは違っても色々な見方があるほうがネット上も楽しいだろうから。)
他には、夜ではなく翌朝書く、とか具体的な計画を肯定的に書くようにしている、という所も自分と共通点があった。
しかし「問い」は他者のプールにつながっている(=自分ひとりの考えが、つきつめれば大きな普遍性にたどり着く)という話には少し疑問。それは日記を書かずとも、創作とかスポーツとかふつうの仕事や家事でも、何かを懸命にやり続けていけば大きな普遍性に触れる瞬間というのがあると思うから。
ともかく日記の有用性について熱く語られた本だった。日記を書いたことのない人がこれを読んでどう感じるかはわからないが、「書くのやめよっかな…」という迷いにとらわれがちな私のような人は、続ける気になれる本だと思う。

参考リンク

ゲームっぽい?/『28日後…』感想

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Amazonプライムビデオで鑑賞。

あらすじ

怒りを抑制する薬を開発中のとある霊長類研究所。ある夜、精神を冒し即効性の怒りを発するウィルスに感染している実験用チンパンジーが、侵入した動物愛護活動家たちによって解放されてしまう。その直後、活動家の一人がチンパンジーに噛まれて豹変、仲間に襲い掛かる…。28日後。交通事故で昏睡状態に陥っていたバイク・メッセンジャーのジムは、ロンドン市内の病院の集中治療室で意識を取り戻す。ベッドから起き廊下をさまようジムだったが、院内にはまったく人の気配がなかった。人の影を求めて街へ飛び出したジムは、そこで驚くべき光景を目にする…。(シネマトゥデイより)

ネタばれ感想

始まってから30分たってから、「あれ?この話観たことある」と気づいた。マンションで親子に出会うあたり。
そして前回観た時は思わなかったけれど、この映画ってなんかゲームっぽい。特に前半。なんでだろう、病院→空っぽの市街→教会…とあまりにスルスル場面が移り変わっていくからか、セリーナが女戦士然としすぎているからか。まあ私の中のゲームのイメージってPS2までで止まっているので、今どきゲームと映画を区別する必要もないのかもしれないけれど。
イントロの研究室の場面で、猿を逃がそうとする若者たちと研究者の「何に感染してるって?」「凶暴性」という会話はよかった。あのセリフでグッとつかまれた。作中ではゾンビとは言ってないんだよね。感染者が同じ感染者を襲わずなぜか人間だけ食べたりしないのに襲う、というのとヒョロヒョロしてたジムがクライマックスで急に無双状態になるのには少し疑問を感じたけれど、全体としては楽しんだ。
ネット上の感想で「走るゾンビってあり?」とか「ロメロ派の自分としてはこれはゾンビとは認めない」とか色々議論があるのも楽しい。
私はあまり体系だって映画を観るということをしてこなかったので、(今まで観たゾンビ映画は『ドーン・オブ・ザ・デッド』『ワールド・ ウォーZ』 『ゾンビランド』 『ゾンビーノ』『アイ・アム・レジェンド』『アイアムアヒーロー』くらい )こういう議論についていけないのがもどかしい。

参考リンク

 

劇場で観たかった/『パラノーマル・アクティビティ』感想

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huluで鑑賞。
このシリーズ、けっこう好きで2作目からはアトラクション感覚で劇場に観に行っていた。ただこの1作目と、東京編は観てなくて、5もいつの間にか上映終わってたっていう…(書きながら本当に好きなのかわからなくなってきた)。

あらすじ

約100万円あまりの低予算で製作されたにもかかわらず、全米興行収入第1位を記録した話題の密室サスペンス・スリラー。ある若いカップルの住む一軒家で起きた不気味な現象を、ビデオカメラ映像でドキュメンタリー風に演出した方式で描く。監督は、ゲームデザイナーが本職のオーレン・ペリパラマウントがリメイク権を獲得するも、作品を観たスティーヴン・スピルバーグが原作を超えることは困難だとあきらめたというその衝撃度に注目。(シネマトゥデイより)

ネタばれ感想

リアルタイムで、劇場で観たかったというのが第一印象だった。
その頃はこのフェイクドキュメンタリーっていう手法もまだ新鮮だったろうし、その後このシリーズの設定がどんどんグダグダになっていくっていうのも知らないわけだし。明るいお茶の間でごはん食べながら観てもあんまり恐怖を感じられなかったなあ。
実は『クローバー・フィールド』も後追いでDVDで観て全然ノれなくて、あろうことかウトウトしてしまったりして、期待してただけにしょんぼりした記憶がある。
初めて見たフェイクドキュメンタリー作品である『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は友人と劇場に見に行って、「なんかわかんないけど新しい物観た!」って大興奮だったから、やっぱり大画面で一時停止したり目をそらしたりできない状況で観るっていうのは重要な要素なのかも。
文句書くだけではあれなのでよかったところを挙げるなら、ケイティがかわいい。その後のシリーズでは無表情の怖い人としてしか登場しないから、今回登場した時は表情豊かでかわいいな!って驚いた。

参考リンク

 

共感したくないけれど/『紙の月』感想

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huluにて鑑賞。

あらすじ

銀行勤めの平凡な主婦が引き起こした大金横領事件のてん末を描いた、『八日目の蝉』の原作などで知られる直木賞作家・角田光代の長編小説を映画化。まっとうな人生を歩んでいた主婦が若い男性との出会いをきっかけに運命を狂わせ、矛盾と葛藤を抱えながら犯罪に手を染めていく。監督は、『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八。年下の恋人との快楽におぼれ転落していくヒロインの心の闇を、宮沢りえが体現する。(シネマトゥデイより)

ネタばれ感想

私語りになって申し訳ないが、数年前まだ今より生活に余裕があったころ、くだらないことに短期間で200万円ほど遣ったことがあって、しかも支払う瞬間「ああ、自由だ。どこへでも行けるし何でもできる」と驚くほど開放感を感じたのを覚えている。 もう収入は下がり始めていてジリ貧だと自分でもわかっていたのに、こういうのを破滅願望っていうんだろうか?
ちなみに中高生時代はキリスト教系の学校に通っていたし、大人になってからお金に困ってそうな男との飲食代を払っていたら増長されて現金を要求されるようになったこともある(しかも私の場合は年下じゃなくて10歳以上も年上の人だったっていうね……悲惨!っていうか馬鹿すぎ!)。
そういう自分にとってこの映画の主人公は他人事ではなく、共感したくないけどせずにはいられなかったし、胸をえぐられる感じがした。私の遣ったお金は横領ではなく自分で稼いだお金だったけど、あの開放感と、うらはらに張り付く空虚さはわかるなあ。
ラスト、駆け抜ける主人公の美しさよ。私にはできなかったけれど、どうかどこまでも心のままに、破滅まで突っ走ってくれと願わずにはいられなかった。

参考リンク


『紙の月』予告篇

 

意外なほど静か/『アルカトラズからの脱出』感想

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観たことのない名作を観てみようシリーズ。
huluで鑑賞。

あらすじ

サンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島。そこには鉄壁の牢獄「アルカトラズ刑務所」があった。そこに入所してきた頭脳優秀な主人公フランク・モリス(クリント・イーストウッド)は脱獄の方法を考えていたが、ある日通気口から外へ出られるという話を聞き、独房の小さい通気口への入り口を大きくしてそこから独房の外へ出て、脱出する手段を思いつく。彼は仲間を誘い、色々な障害をクリアし、それまで絶対に不可能といわれた脱獄へと挑戦する。(Wikipediaより)

ネタばれ感想

アルカトラズ島について勝手に軍艦島みたいなイメージを持っていたので、イントロが始まってサンフランシスコにかなり近い!というのにまず驚いた。自由時間などで外に出るたび金網越しにビル群が見えるわけで、脱出を考えるなってほうが無理な景観だ。
作品自体は硬派なハードボイルドという感じで、意外なほど静かに話が進む。脱出もので私が今まで見たのは『大脱出』『ショーシャンクの空に』くらいなので、それと比べてしまうと地味だな~という印象は否めない。しかし『大脱出』と違うのは、実話が元になっていうのもあってか設定にほころびがないこと(まあ『大脱出』 はそういうツッコミも含めて楽しむ作品なのかも)。それとあれこれ説明せずに演出で見せるシーンが多いこと。絵描きのおじいちゃんが絵を描く権利を気まぐれに取り上げられたせいでヤケを起こし、周囲の人間が所長に怒りをつのらせる描写や、黒人のボスと徐々に打ち解けて協力しあうようになる描写にグッときた。
 
ちなみに鑑賞後ほかの方の感想を漁ろうとGoogleにタイトルを入力していると、予測変換で「アルカトラズからの脱出 バッツ」という文字が。バッツ…… (泣)

参考リンク


アルカトラズからの脱出 - Trailer

 

物語の力/『君の名は。』感想

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先に観ていた家人から「今日会社で嫌なことあったから心の洗濯をしに2回目観にいくわ。一緒にいこう」と誘われたので、久々に劇場へ足を運んだ。

あらすじ

星を追う子ども』『言の葉の庭』などの新海誠が監督と脚本を務めたアニメーション。見知らぬ者同士であった田舎町で生活している少女と東京に住む少年が、奇妙な夢を通じて導かれていく姿を追う。キャラクターデザインに『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』シリーズなどの田中将賀作画監督に『もののけ姫』などの安藤雅司、ボイスキャストに『バクマン。』などの神木隆之介、『舞妓はレディ』などの上白石萌音が名を連ねる。ファンタスティックでスケール感に満ちあふれた物語や、緻密で繊細なビジュアルにも圧倒される。(シネマトゥデイより)

ネタばれ感想

新海監督の作品は『星を追う子ども』までは全部観ていた。画面が美しく、個々のシーンとして鮮烈で心に残る場面はあるけれど、同人誌っぽいというかPVっぽいという印象が強かった。描きたいシーンだけ描いて、物語を語るうえで地味で面倒だけど必要な描写やエピソードの積み重ねが足りないという感じ。そして『星を追う子ども』を劇場で観たとき、隙間を埋めようとはしてるもののそのすべてが借り物のにおいが強すぎて、正直なところかなり失望してしまった。この監督の作品はもう観まい、と思うほどに。
しかし今回の『君の名は。』は、今まで私が感じていた足りない点をすべて補って、さらに本来の指向も活かしきった、面白くていい作品になっていた。鑑賞後口から感想がマシンガンのように止まらない家人の横で、監督、がんばったね、と勝手に思ったりもした。
実際のところ、運命の人とかそういう世界観には全く共感も憧れも抱けないけれど、観ながらどうか助けられますように、どうか再会できますように、どうかどうか勇気をだして声をかけて、と心から願った。そう思える物語の力、というものに胸がいっぱいになる作品だった。

参考リンク


「君の名は。」予告2