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川辺のレモン

映画・ドラマ・本の感想など。ネタばれあり

半笑いから恐怖へ/『ヴィジット』感想

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Amazonプライムビデオにて鑑賞。

あらすじ

シックス・センス』などで知られるM・ナイト・シャマラン監督が手掛けたスリラー。三つの奇妙な約束事がある祖父母の家にやって来た姉弟が体験する恐怖を描く。『パラノーマル・アクティビティ』シリーズなどのジェイソン・ブラムと『マッド・ナース』などのマーク・ビエンストックが、本作の製作陣にも名を連ねている。約束が破られたら何が起こるのか、様子が変な祖父母や夜中に聞こえる音、襲ってくる女など、随所に伏線の張り巡らされた予測不能な展開に引き込まれる。(シネマトゥデイより)

ネタばれ感想

画面が『パラノーマル・アクティビティ』っぽい、と思ったら制作陣がかぶっているのか。
序盤は「おばあちゃん、半ケツw」と半笑いのノリで見ていたんだけど、実は祖父母ではない知らない人らしいとわかったあたりから緊迫感がすごかった。実は別人でしたってオチ、結構すぐわかった人が多いみたいだけど全然予測できず…。最後は姉弟が成長していいラストだった。
緊迫感が高まるまでは、普段会わない祖父母へどういう距離感で接していいかわからない感じとか、姉弟のあの感じとか、恐怖よりあーわかるわかるという共感の割合が多かった。まあ私と弟はあんなに仲良くはなかったんだけど、でもなんだか懐かしかった。

参考リンク


『ヴィジット』予告

 

善悪という幻想/『殺人出産』感想

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『コンビニ人間』が面白かったので、同じ著者の本を買ってみた。
大変面白かった。

あらすじ

今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。(「BOOK」データベースより)

ネタばれ感想

「常識なんて、根拠のない聞きかじりのパッチワークに過ぎない」
映画監督の今敏さんの言葉だが、これを数年前に聞いたとき、自分がこれまで感じていた生きづらさの正体を言語化されたという気がした。『殺人出産』は、この感覚を「殺人が10人の出産とひきかえに合法化された社会」という極限の設定を用いることで描いた作品である。
 
設定だけ聞けば突飛な出オチ小説だと思う人もいるかもしれないが、実際はとても丁寧にその社会に生きる主人公の生活を描いていて、本当に今生きているこの日常の延長線上にありうるかもしれない、と思わせる。
実際に少子化に向かっている現在、「死に対して死で報いるなんて野蛮。死には生によって報いるべき」なんて理屈は確かに合理的だ。その価値観は“蝉スナック”のように主人公の周囲に自然と浸透している。この“蝉スナック”が流行っていく描写によって、あっこういう理解できない事が当たり前になっていくのってあるかも!と思わせる構成が、上手い。
新世代の子ども達によって上塗りされていく常識や価値観。しかし子どもは理解できない怪物ではなく、誰よりも純真に他人の幸せを願ったりもするのだ。
頭の中のプログラムを書き換えられながら人類は続いていく。
この世の中でいま善とされているものも悪とされているものも、すべては幻想にすぎない。それなのに、結局は受け売りにすぎない価値観を振りかざし他人を裁く、その無意味さと滑稽さよ。
 
最終的に新しい価値観に迎合する事を選んだ育子は、一見『コンビニ人間』の古倉と反対の選択をしたかに見える。しかし、作品全体に通底しているテーマは同じだと感じた。『コンビニ人間』よりエッジイで間口が狭いかもしれないけれど、私はこっちのほうがガツンときた。作者の言いたいことが自分の問題意識と合うからかもしれない。この作者の作品を追っていくことに決めた。

関連リンク

 

 

klemon.hatenablog.com

 

Kindle Unlimitedを解約した理由

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8月からサービスが開始されたKindle Unlimited(Amazon電子書籍読み放題サービス)、入会して2ヵ月たったが、うまく活用できそうにないので解約手続きをした。
 
私の現在の読書環境はKindleが中心で、どうしても読みたい本でKindleに取り扱いがなければ紙の本も検討するか…という感じ。Kindle PaperWhiteも初代の時に購入した(が、途中でデータ量制限されて漫画を読むのに手間がかかるようになってしまったので使わなくなってしまった)。今は専らiPhoneとPCで読んでいる。
 

Unlimitedを解約した理由は3つ

 

1.ラインナップが新古書店状態

いくつかニュースが取り上げているので、Unlimitedに興味あるひとはご存知かもしれない。
Amazon側は電子読み放題サービス市場を独占するために出版社にかなりいい条件(支払い面で一時損をしても)を出したのに、前々から警戒してた出版側は「新作は出さない」「出しても途中までの巻を試し読み的に出すだけ」という対策をしたわけだ。
さらに予想以上の読者登録があって予算がたりなくなったAmazonは、出版社と読者の双方に何の告知もなく人気作を読み放題から外してしまった。つまり「人気の○○があるから」という条件を見て登録した読者は裏切られた形になる。これでは信頼も何もない。(映画の配信サービスも似たようなものだけどさ~)まるで電子のブックオフ状態。古いのを安く読めるけど、目的の本があるとは限らない。
 

2.カテゴリ別に探しにくい

目的の本を探してもないことも多い…なら、好きなジャンルの本をパラパラ眺めて暇つぶししようか、と思ってもカテゴリ分けがうまくいってない。明らかに少年漫画なのに少年漫画カテゴリになかったりする。いや、暇つぶしはできるかもしれないけど、なんか損した感がある。
 

3.読みたい本(たいていUnlimited対象外)に時間を割きたい

仕事と生活に必要な家事などの時間を除いたら、意外と読書に費やせる時間って少ない。どこかで読んだけど、一般的に平日に社会人がとれる1日の自由時間って1~3時間しかないとか。
私の場合本だけでなく映画やドラマも観たいし、だったらそんなに読みたいと思ってない本を読んでる時間もないなあ…と冷静になってしまった。
当初はUnlimitedに登録して書籍代が節約になる♪と皮算用してたけど、読みたい本を読む時間のほうが貴重かも、と思ってしまったのだった。
 
 
以上、ダラダラ文句を書いてしまったけど、これからも読み放題でないKindleは使い続けるつもりなので、Amazonにはがんばってもらいたい。
あとラインナップはブックオフ新古書店状態だけどUnlimitedでは読めば著者と出版社に印税が入る
これってコンテンツの未来を考える際に重要なことなので、ブックオフで買うよりは断然Unlimitedで読むほうがいいんじゃないかな。
今後も豊かな出版文化を享受したいなら。

『ON 異常犯罪捜査官 藤堂比奈子』感想【ネタばれあり】

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今期のドラマで視聴したのはこれと、『家売るオンナ』のみ。
前期のドラマ『世界一難しい恋』に出ていた波瑠さんが出てたのと、こういうサイコパス系の話が好きなので観ることに決めた。
設定が現実離れしていることと(カドカワ系列の漫画雑誌に連載してそう、と思ったら原作はカドカワ主催のホラー小説大賞の受賞作だったみたい)、雰囲気が暗いこと、一回ごとに話の区切りがつかない構成だったので、回を追うごとに視聴率が落ちていったというのは納得。でも、私はこういうザ・中二病って感じの話が大好物なので、最初から最後まで楽しめた。もし私が現役の中高生だったら、主人公のふるまいを真似して見事な黒歴史を作っていたかもしれない…。

あらすじ

藤堂比奈子は警察学校を優秀な成績で卒業した新人刑事。一見明るく真面目な態度で勤務する彼女だが、心に深い闇を持っており、興味の対象は殺人犯が人を殺害する心の"スイッチ"は何かという疑問を解明すること。
個性豊かなメンバーと共に捜査をしていく内に、様々な性格を持った猟奇的犯罪者と対峙していく事で、彼女の抱く疑問の答えは見つかるのか?

 ネタばれ感想

話としては女性を殺して皮をはぐ犯人と対峙する話の完成度がとても高かったと思う。
その猟奇性と耽美性は、オープニングムービーに描かれた作品のイメージにぴったり一致していた。火傷した女が美しい肌を持つ女性たちの皮を剥ぐことに執着するって、よく考えると意味不明だけど説得力があるし。
9話全体としてみると、主人公の内面について最後の決着がやや肩すかし感があったのと(「怪物」という言葉にあらがうのと、「正しく生きていける」という言葉を証明するのって、言葉が違うだけで同じじゃない?言った人が違うのが重要なの?)、クライマックスにもう少し動きのあるアクションがあってもいいような気がした。
でも周りのキャラクターが皆個性合って好きになってたので、終わるのは単純に寂しかった。(特に私は中島先生がめちゃくちゃツボで、登場するたび「萌えメガネが(出てきた)!」と叫んで家人の冷たい視線を浴びていた)

 関連リンク

↓原作小説はドラマとまた違った設定で面白い、とレビューにあったので
ちょうど50%オフだったのもあってkindleで購入してみた。

 

『コンビニ人間』感想【ネタばれあり】

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文庫になるまで待とうと思っていたのだけど、漫画家の古泉智浩さんと歌人枡野浩一さんがやっている本と雑談ラジオのなかで話題になっててすごく面白そうだったので、kindleで注文してすぐ読んでしまった
(余談だけど↑このラジオ結構好き。あんまりとりつくろってない感じが、なんか聴いててなごむ。
あと映画の感想について、「もっと自分語り&好みで皆どんどん語ればいい」って二人が仰っていて、前々から感想ブログを始めたかった自分は背中を押された気がしてこのブログを始めたのだった)
 

あらすじ

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。(「BOOK」データベース)
 

ネタばれ感想

読みやすくて面白かった。
私も主人公と同じくわりとレールから外れた感じの人生で、去年くらいまで親や世間の「結婚&子どもはまだか」プレッシャーや、昔の友人に会った時のマウンティング合戦にメンタルをやられそうになっていたので、30代未婚非正規の人間に対して無遠慮な人間たちの描写を食い入るように読んでしまった。
でもこの作品の面白いところは、すごく的確に描写はしてるけどシーン全体としては必要以上に毒や皮肉をこめていないところ。
それは主人公の心理のあらわれで、困ったなとは思っているけど相手に憎悪とかは感じていないから淡々としてる。
反面、最後のコンビニの“声”をきくシーンのなんと感動的なことか。
構成として必然ではあるだろうけど、このバランスが本当にすごいと思った。
 

関連リンク

 

↓こちらもkindleで読了。
作者のコンビニへのラブレター。これ読むと確かにクレイジーかも…

 
 
 
 

『エスター』感想【ネタバレあり】

エスター

前から観たかったので、Amazonプライムビデオで見つけ喜び勇んで視聴。
直接的なグロい描写はほとんどないのに、不穏な雰囲気と生々しい人間関係の描写でぐんぐん引き込まれてしまった。
内容について、なんとなく悪魔っぽいものが原因なのかなあと思っていたらその予想は外れた。

 あらすじ

孤児院の少女を養子に迎え入れた夫婦が、その日以来奇妙な出来事に遭遇する恐怖を描くサスペンス・ホラー。『蝋人形の館』のジャウム・コレット=セラ監督がメガホンを取り、実子を流産で亡くしたことへのトラウマと謎めいた養女に苦しめられる夫婦の姿を追う。悪魔の形相を見せる少女役の子役イザベル・ファーマンの熱演、ホラー作品を得意とするダーク・キャッスル・エンターテインメントによる一流の恐怖演出が観る者をとらえて離さない。( シネマトゥデイ

ネタばれ感想

外見は少女なのに中身は33才、というのが全く予想外だったので驚いた。
そしてそれまで「なにこの子…おそロシア!」という目で見てたのが「あーだからあの時もこの時もこういう行動をとったのか…」と腑に落ちつつ、彼女の内面を想像して切ない気持ちになってしまった。
横で見ていた家人は「SEXしたいならそういう人(ロリコン)とかいただろうに」って言ってたけど、違うんだ子供としてじゃなく大人のひとりの女性として愛されたかったんだよと思った。かといって「成長できない病気の大人の女性」として自立して生きる道を選ばなかったのは、きっと少女として生きることのほうがメリットが大きいと判断していたんだろうし、そのアンビバレントな生き方に引き裂かれていたのじゃないだろうか。
ともかくどちらにしろ 成長しない体を持った彼女は最初からその家の養子として数年以上留まる気はなかったはずで、そういう考えると父親を独占してほかの家族=邪魔者を排除する、というのが最初から目的だったのかな。
壁に描かれたリアルエロ絵にはちょっと笑ってしまったけど、欲求不満というか性についての衝動っていうのは実際の社会でも文明を発達させるほどの力を持っているわけだし、馬鹿にはできないよなあなどと思った。

関連リンク

 ↓DVDでは映像特典としてもうひとつのエンディングが収録されているらしい

 
 
 Youtubeで感想を語り合っている番組があったので貼っておく
↓外見は少女なのに中身は大人、というので思い出した漫画
(こちらはほのぼのした内容)
 

このブログについて

映画やドラマや本のレビュー&文具関係などを中心に書いていこうかと思います。
 
ブログタイトルは梶井基次郎の檸檬から。
本屋ではなく川辺に置かれたレモン(腐りかけ)。
 
物語に触れてあれこれ考えている時が一番幸せですが、観るものが偏っているので客観的に体系的に語れる脳は持っていません。